🌍🐾 世界の動物・昆虫ニュース — 2026.11.05
新種 2件 + 新知見 3件 = 計5件
🔬 新種発見 ― 2選
1.
ブラジルの洞窟の闇に、洞窟だけで暮らすムカデがいた ― ボドケナ山地の2つの洞窟から、世界で2種目の洞窟性オオムカデ属 Otostigmus troglobius
ムカデ(オオムカデ目・オオムカデ科)
ブラジル・マットグロッソ・ド・スル州(ボドケナ山地国立公園)
2026
📷 Chagas-Jr. & Fernandes (2026) / Species New to Science より | Otostigmus troglobius のホロタイプ(標本番号 CZUFMT-MY 02507)の写真
ブラジル中西部、ボドケナ山地国立公園にある熱水の作用でできた「ハイポジェニック洞窟」2か所から、オオムカデ科 Otostigmus 属の新種 Otostigmus (Parotostigmus) troglobius が記載された。この属で洞窟にすむ種(トログロビオント)が確認されたのは、世界で2例目だという。2つの洞窟は離れているが、ミトコンドリアのCOI遺伝子を調べるとどちらの個体も同じ一つのまとまりに入り、同一種と判断された。体の特徴は、触角が17節と長く、最後(第21)の脚がとても長く細い円筒形であること。背板の正中にある隆起や、腹板にある短く不完全な縫合線が O. tidius に似ている。種小名は、洞窟にだけすむ動物を指すラテン語 troglobiont にちなむ。この山地は、ブラジルの地下の生き物が集まる重要な場所で、洞窟の保全が大切だと論文は述べている。論文は Subterranean Biology 誌。
2.
海南島の山の熱帯雨林から、こめかみに黒い三角の斑をもつアカガエルの新種 Rana hainan ― 20年近く別種と取り違えられてきた?
両生類(無尾目・アカガエル科)
中国・海南島(万寧市・吊羅山)
2026
📷 Hao-Tian Wang・Xian-Chun Qiu / Species New to Science より | Rana hainan のメスのパラタイプ(生きた状態、背側面・腹面・手のひら・足の裏)
中国・海南島の万寧市と吊羅山(ちょうらざん)の山地熱帯雨林で採集されたアカガエルが、Rana 属の新種 Rana hainan として記載された。ミトコンドリアの16S・COI・cyt b の3つの遺伝子で系統を調べると、R. johnsi グループの中で、海南島の個体群だけが独立した系統になった。体の大きさや形の統計解析(PCA、DAPC、PERMANOVA)でも、近縁種との差がはっきりしていた。特徴は、頭が幅より長いこと、こめかみにくっきりした三角形の黒斑があること、背の両側の線(背側線)が細くまっすぐなこと、足のゆびの先に連続した溝があること、繁殖期のオスの第1指に灰白色の婚姻瘤があること。体長はオスで約44〜45mm、メスで45〜57mm。海南島では過去に R. varians、R. nigrotympanica、R. johnsi の記録があり、吊羅山のものは新種に見直された。ほかの場所の記録は、調査が進むまで Rana cf. johnsi として保留されている。論文は ZooKeys 誌。
🧠 既知種の新たな発見・知見 ― 3選
3.
「絶滅した巨大ヅル」は、ただの大きなクロヅルだった ― 150年前に名づけられた Grus primigenia を、古代DNAが書き換える
鳥類(ツル目・ツル科)
ヨーロッパ(英・仏・独・バレアレス諸島)
古代DNA
2026
📷 Wikimedia Commons より(※イメージ写真) | クロヅル Grus grus。記事の化石の骨ではなく、現生の同種の写真
1860年代、フランスの生物学者ミルヌ=エドワールは、南フランスの洞窟から出た後期更新世のツルの脚の骨が、現生のクロヅル(Grus grus)などよりはるかに太いことから、氷期の終わりに生きていた絶滅種の巨大ヅル Grus primigenia と名づけた。英ボーンマス大学のジョン・スチュワートさんらは、英国・ウェールズ・フランス・ドイツ・バレアレス諸島で見つかった18点の骨から古代DNAを取り出して比べた。すると、巨大ヅルとされた骨も含めて、すべてクロヅルのDNAだった。ツルはオスが大きくメスが小さいため、サイズ差が別種に見えた可能性があるという。ただし、元の模式標本はパリの博物館にあり、貴重すぎて試料を採れていない。さらに、クロヅルは11世紀ごろから次第に小さくなっていて、その理由は気候変動や湿地の排水などが考えられるものの、まだ分かっていない。論文は Royal Society Open Science 誌。
4.
北米の野生のマガモに、養殖ガモの血が100年かけて入り込んでいた ― 博物館の標本400点超が語る「野生らしさ」の薄れ
鳥類(カモ目・カモ科)
北米(フライウェイ別)
遺伝子汚染
2026
📷 Wikimedia Commons より(※イメージ写真) | マガモ Anas platyrhynchos。研究対象の北米のマガモと同種の写真
狩猟用に放たれる「ゲームファーム(養殖)」のマガモが、野生のマガモの遺伝子をどこまで変えてしまったか。米テキサス大学エルパソ校のローレン・マクファーランドさんらは、博物館の標本400点超と現代の野生600羽超のDNAを調べ、1800年から2020年までの遺伝の歴史を組み立てた。養殖由来の遺伝子が野生のマガモに最初に現れたのは1910〜20年代で、放鳥が記録されはじめた時期と重なる。その後も地域ごとの放鳥のやり方に合わせて、何度も波のように入り込んでいた。養殖ガモは野生より遺伝的な多様性がおよそ35%低く、近親交配の度合いは2倍を超える。太平洋と中央のフライウェイ(渡りの経路)の野生ガモはほぼ野生のままだったが、大西洋側では1980年代以降、平均でおよそ20%が養殖由来だった。多様性が低い鳥は免疫が弱いおそれがあり、鳥インフルエンザの流行下で心配だと研究チームは述べる。論文は Current Biology 誌。
5.
10年近い大干ばつを耐えたデグーの群れが、ついに消えた ― チリの社会性ネズミ、2019年の極端な少雨で「地域絶滅」
哺乳類(齧歯目・デグー科)
チリ中部
気候変動と個体群
2026
📷 Wikimedia Commons より(※イメージ写真) | デグー Octodon degus。動物園で撮影された同種の写真
デグー(Octodon degus)は、チリにだけすむ社会性の齧歯類で、ペットとしても知られる。チリ生態学・生物多様性研究所のアンネマリー・ファン・デル・マレルさんらは、チリ中部の野外調査地で2009〜2020年に行われた捕獲・標識・再捕獲の記録を解析した。デグーの群れは、ほぼ10年続いた大干ばつの間も、多くの年で増え続けていた。ところが2019年に降水量が極端に少なく、植物の一次生産が危機的な水準まで落ちると、生存率と新しい個体の加入が下がった。2020年には捕獲を続けてもデグーは1匹も捕れず、2021年の調査でも確認できなかった。その調査地の低木の被覆率は約14%だった。10km以内に別の群れが見つかっていて、低木が食べ物と日陰をくれる場所かどうかが生死を分けた可能性がある。デグーは成体の多くが2年目を越えられず、毎年の新しい個体の加入が欠かせない。論文は Ecology 誌。
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