🌍🐾 世界の動物・昆虫ニュース — 2026.11.04
新種 2件 + 新知見 3件 = 計5件
🔬 新種発見 ― 2選
1.
体重30kgの「巨大ネズミ」が、4000万年前の東南アジアにいた ― タイ南部の化石の歯1本から見つかった、齧歯類の新属新種 Yakamys sirindhornae
化石哺乳類(齧歯類・イスキロミス科)
タイ南部(クラビ盆地)
2026
📷 Chaimanee et al. (2026) / Species New to Science より | ホロタイプの下顎第2大臼歯(標本番号 TF 2942)の写真
タイ南部のクラビ盆地にある、始新世後期(およそ4000万年前)の地層から、とても大きな齧歯類(ネズミの仲間)の化石が見つかり、新属新種 Yakamys sirindhornae として記載された。手がかりは、下あごの第2大臼歯1本(長さ約11.6mm)と、1本の切歯だけ。歯の大きさから体重を7通りの式で推定すると21〜47kg、平均で約32kgになり、これまでに知られていた古第三紀のイスキロミス科の仲間よりずっと大きい。歯の表面の細かな構造は、この科のものと一致していた。属名はタイ語で「巨大」を意味する yak とギリシャ語の「ネズミ」mys を合わせたもの、種小名はタイの科学や古生物学を長く支えてきたシリントーン王女にちなむ。巨大化した齧歯類としては南米の新第三紀のものがよく知られているが、それよりずっと前、初期の齧歯類の系統ですでに大きな体が進化していたことになる。体重は歯からの推定で、研究チームも不確かさが大きいと断っている。論文は Scientific Reports 誌。
2.
チベット東南部の「暖かく乾いた谷」にだけいたトカゲ ― 怒江(サルウィン川)ぞいの標高2300〜3300mから、のどに水色の斑をもつ新種 Diploderma gulaense
爬虫類(有鱗目・アガマ科)
中国・チベット自治区ザユル県(怒江流域)
2026
📷 Cai et al. (2026) / Species New to Science より | Diploderma gulaense の生きたオス(体の側面・背面・腹面・頭部・口の中)
中国・チベット自治区ザユル県のグラ郷から、アガマ科のトカゲ Diploderma 属の新種 Diploderma gulaense(英名 Gula Mountain Lizard)が記載された。見つかったのは、怒江(サルウィン川)の支流にあたる「ランブ谷」の、標高2,332〜3,300mの暖かく乾いた谷だけ。ミトコンドリアのND2遺伝子を調べると、同じ怒江流域だけにすむ D. laeviventre、D. yangi、D. slowinskii と一つのまとまりをつくり、中でも D. laeviventre に最も近かった。頭胴長はオスで53〜63mm、メスで55〜70mm。鼓膜が小さな鱗でおおわれ、のどに水色の斑があり、オスは背の両脇に淡い水色の縞が入る。生息域がせまく、生息環境の悪化も進んでいるため、論文は暫定的に「危急(VU)」の評価を提案している。川の谷ごとに集団が隔てられて別種になっていくことを示す例で、横断山脈にはまだ見えていない多様性が隠れているという。論文は ZooKeys 誌。
🧠 既知種の新たな発見・知見 ― 3選
3.
スズメガのオスは、生殖器で「超音波」を鳴らしてコウモリを撃退していた ― その仕組みは、少なくとも4回、おそらく7回も別々に進化した
昆虫(チョウ目・スズメガ科)
世界各地
対捕食者戦略
2026
📷 ScienceAlert より | スズメガの仲間。オスは生殖器まわりの構造をこすり合わせて超音波を出す
夜に飛ぶスズメガのなかには、コウモリの超音波探知(エコーロケーション)をじゃまする音を出す種がいる。その音を出す場所が、オスの生殖器まわりの構造だった。米フロリダ自然史博物館のポール・マソニックさんらが143種のスズメガを調べると、77種が超音波を出した。仕組みは三通りで、生殖器の鱗と、腹部の鱗・とげ・小さな突起とをこすり合わせる(いわゆる「ストリデュレーション」)。これまで知られていなかった「でこぼこの面」を使うものも見つかった。系統樹に重ねると、この技は500万〜3000万年ほど前にかけて少なくとも4回、おそらく7回、別々に進化していた。昼や薄暮に飛ぶようになった系統では、音を出す構造が失われている。長く続く音のほうがコウモリの探知を乱しやすく、短い音は驚かせる役かもしれないという。論文は Proceedings of the Royal Society B 誌。
4.
タスマニア沖の海山に、深海ウナギ280万匹が集まっていた ― 重さは3500トン超。目的はおそらく産卵
魚類(ウナギ目・ホラアナゴ科)
豪州タスマニア沖(ペイシェンス海山)
集団行動
2026
📷 CSIRO / ScienceAlert より | ペイシェンス海山に集まるバスケットワークウナギ(Diastobranchus capensis)
オーストラリア・タスマニア島の南にあるペイシェンス海山(面積およそ2km²、ヒューオン海洋公園内)に、深海魚のバスケットワークウナギ(Diastobranchus capensis)が、ピーク時で最大およそ280万匹、合計3,500トンを超えて集まっていることが分かった。豪州の研究機関CSIROのベン・スコールディングさんらが、音響測深機で群れの規模を初めて見積もった。ウナギは12月から8月ごろまで海山にいて、3〜5月に最も多くなる。海山の上、海底から150mほどの高さまで群れが立ちのぼっていた。ピーク時に捕れた個体は産卵の準備が進んでおり、目的は繁殖とみられる。同じ場所に集まるオレンジラフィー(ヒウチダイ)とは、海山の別の場所を好んでいた。近くの似た海山ではなくなぜここなのか、そしてなぜ食べずに集まるのか(捕れたのはわずか7匹で、産卵中は餌を食べないのかもしれない)は、まだ謎のままだ。論文は Royal Society Open Science 誌。
5.
50年前のカエルの大量消失は、ツボカビの到来と同じ時期だった ― ブラジルの博物館標本370点が語る、「感染がなかった時代」と「広がった時代」
両生類(無尾類・17種)
ブラジル(ボラセイア生物学研究所・大西洋岸森林)
感染症の歴史
2026
📷 ScienceDaily より | 標本調査の対象になった地域のカエル、Haddadus binotatus(写真は同種)
1970年代末から80年代はじめにかけて、ブラジルの大西洋岸森林で、カエルが一斉に姿を消した。その原因をさぐるため、米国のスミソニアン国立動物園・保全生物学研究所とペンシルベニア州立大学、サンパウロ大学のチームは、サンパウロ近郊のボラセイア生物学研究所で採集された保存標本、17種・370点以上を調べた。すると、1979年より前に集められた標本からは、カエルツボカビ(Batrachochytrium dendrobatidis)はまったく見つからず、1980年代の標本では半数以上から検出された。つまり、ツボカビは減少が起きた時期とほぼ同時に入ってきて、広がったことになる。一方、最も数を減らした種からは感染が検出されず、むしろ安定していた種で感染が多かった。感染に耐えた種と、すぐに死んだ種がいたことを示唆する。2022〜2024年の調査では、17種のうち12種が見つかり、多くの個体群は回復しているようだ。論文は Molecular Ecology 誌(ボイエットさんら)。
🔗 https://www.sciencedaily.com/releases/2026/11/261102202838.htm
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