🌍🐾 世界の動物・昆虫ニュース — 2026.10.29
新種 2件 + 新知見 3件 = 計5件
🔬 新種発見 ― 2選
1.
目も色もない「顔なしの神」の名をもつカタツムリ ― 標高2000mの中国・雲南の洞窟から、淡水の洞窟性巻貝の新種 Erhaia dijiang
軟体動物(腹足類・エルハイア科)
中国・雲南省玉溪市の洞窟(標高約2,062m)
2026
📷 Pensoft Publishers / ScienceDaily より | ほぼ透明な円錐形の殻と細長い触角をもつ Erhaia dijiang
中国・雲南省玉溪市の洞窟から、淡水にすむ巻貝の新種Erhaia dijiangが記載された。目は完全に退化して視覚の器官がなく、殻はほぼ透明の円錐形、体に色素はなく、触角は細長い。光を当てると石の下にもぐって避ける。種名は中国の古典『山海経』に登場する、顔のない山の神「帝江」にちなむ。見つかったのは標高約2,062mの洞窟で、エルハイア科の洞窟性の貝としては最も高い場所の記録であり、中国で初めての淡水の洞窟性カタツムリでもある。水深1m未満・約20℃の礫の間で珪藻を食べ、洞窟の入口から2m以内にしかおらず、近くの小川では見つかっていない。2025年8月の調査で確認できたのは生きた成貝3個体と空の殻1つだけで、幼貝はゼロ。研究チームは保全の見通しを「楽観できない」としている。論文はSubterranean Biology誌56巻127ページ(DOI: 10.3897/subtbiol.56.188075)。
🔗 https://www.sciencedaily.com/releases/2026/10/261019093445.htm
2.
「モンティコラ」と混同され続けた山のハブ ― 中部ベトナムとラオス南部の高地から、クサリヘビの新種 Ovophis orlovi
爬虫類(クサリヘビ科・ヤマハブの仲間)
ベトナム中部〜ラオス南部(コントゥム=ザライ高原・ボラベン高原)
2026
📷 Idiiatullina et al. 2026 / Novataxa より | Ovophis orlovi の生時の姿
ベトナム中部とラオス南部の山地林から、ヤマハブの仲間(Ovophis属)の新種Ovophis orloviが記載された。長いあいだO. monticola、ときにはO. convictusと取り違えられてきたヘビで、ミトコンドリアDNAの解析では独立した系統としてまとまり、最も近いO. anitaeとは遺伝距離(チトクロームb)で8.0%離れていた。体の比率、鱗の並び、体色の組み合わせにも違いがある。生息が確認されているのは、標高およそ900〜1,400mの常緑の山地林で、ベトナムのコントゥム=ザライ高原とラオスのボラベン高原。見落とされてきた種が、東南アジア大陸部の山岳地帯にまだ潜んでいることを示す例となった。論文はRussian Journal of Herpetology誌33巻3号178〜196ページ。
🧠 既知種の新たな発見・知見 ― 3選
3.
カラスの「ひらめき」は0.2秒 ― 動く点の向きを、ヒトやサルのほぼ2倍の速さで判断した
鳥類(ハシボソガラス)
ドイツ・テュービンゲン大学
認知科学・意思決定の速さ
2026
📷 University of Tübingen / EuropaWire より | ハシボソガラス
ドイツ・テュービンゲン大学のフィリップ・シュミットバウアーとアンドレアス・ニーダーは、ハシボソガラス(Corvus corone)2羽に、画面の点が動く向きを答えさせる課題を行い、判断までの時間を測った。平均は235ミリ秒で、同じ型の課題で報告されているヒトやサルのおよそ半分の時間だった。動きがはっきりしていれば正答率はほぼ100%、見えにくくても偶然より高かった。鳥の脳でヒトの前頭前野に相当するとされる高次の領域「NCL(尾外側巣状皮質)」の神経活動を記録すると、向きごとの反応の違いは刺激の約70ミリ秒後には表れ始めた。哺乳類のような層状の大脳皮質をもたない鳥の脳でも、速い判断ができることを示す結果だ。ただし調べたのは2羽で、課題も単純な点の動きに限られる。論文はScience誌2026年10月22日号(DOI: 10.1126/science.aed6459)。
4.
海鳥にも「時差ボケ」があった ― 東西に速く飛ぶと体内時計が追いつかず、太陽コンパスが最大15度ずれる
鳥類(マンクスミズナギドリ)
英国の繁殖地〜大西洋の採餌場
航法・体内時計
2026
📷 Science News より | マンクスミズナギドリ
英国で繁殖するマンクスミズナギドリ(Puffinus puffinus)は、巣から最大1,000kmも離れた海で餌をとり、巣へ戻ってくる。オックスフォード大学のティム・ギルフォードらは、約20年にわたり1,045羽に超小型GPSをつけ、巣への連続した帰路1,837回を解析した。すると、東西に速く移動したとき、鳥は太陽の位置から方角を知る「太陽コンパス」の読みを誤り、最大15度ほどずれていた。移動で現地の時刻が体内時計より速く変わり、時計が追いつかないためだ。この誤差は巣に近い海岸でも見られ、鳥が太陽コンパスと海岸の目印を併用しつつ、両者が食い違うこともあるとわかる。ずれは小さく、遠回りは数kmにとどまるので、巣には無事戻れる。論文はScience誌(DOI: 10.1126/science.adz2542)。
🔗 https://www.sciencenews.org/article/seabird-jet-lag-navigation-off-course
5.
世界最大級のコウモリが「縮んで」いた ― 博物館の標本121点が語る、マダガスカルオオコウモリの頭骨の6%減と、狩猟の影
哺乳類(マダガスカルオオコウモリ)
マダガスカル/米国フィールド博物館
体サイズの縮小・狩猟圧
2026
📷 Science News より | マダガスカルオオコウモリ(Pteropus rufus)
マダガスカル固有の大型の果実食コウモリ、マダガスカルオオコウモリ(Pteropus rufus)は、翼を広げると最大1.5m近くになる。米フィールド博物館のエミリー・コーネリアス・ルースとスティーブン・グッドマンは、9つの博物館が150年以上かけて集めた標本121点について、頭骨と歯の12か所を計測した。すると、1980年代以前の頭骨は、それ以降の個体より平均で約3.6mm(約6%)長かった。気候変動や生息地の破壊も候補だが、縮小の時期は、コウモリ猟が商業化した時期と重なる。肉の量が多い大きな個体が選んで狩られ、体の大きな個体が減っていった可能性がある。2000年代初めに約30万頭いたとされる個体数は、その後およそ3分の2まで減ったと推定されている。論文はJournal of Mammalogy誌(DOI: 10.1093/jmammal/gyag092)。
🔗 https://www.sciencenews.org/article/bats-get-smaller-madagascan-flying-fox
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