🌍🐾 世界の動物・昆虫ニュース — 2026.09.18

🌍🐾 世界の動物・昆虫ニュース — 2026.09.18

新種 2件 + 新知見 3件 = 計5件


🔬 新種発見 ― 2選

1.

100年ぶりに「新しいネコ」が生まれた ― ボリビアの雲霧林にひそんでいた小さなヤマネコ、地元の呼び名そのままに Leopardus tilcayo と命名。「ティグリナ」は実は5種だった

哺乳類(ネコ科)ボリビア・ユンガス2026

Leopardus tigrinus emiliae, a tiger cat in Brazil

📷 w_endo / Wikimedia Commons(CC0) | ※イメージ:同属種 Leopardus tigrinus emiliae(ブラジル) 新種ティルカヨは同じ「ティグリナ(タイガーキャット)」の仲間。斑紋がより大きく不規則で、尾が長く、毛色はくすんでいる

生きているネコ科の新種が正式に記載されたのは、1923年にウルグアイのパンパスキャットが記載されて以来、1世紀ぶりのことだ。ベルギー・アントワープ大学のヨナス・レスクロアール氏、ボリビアのパオラ・ノガレス=アスカルンス氏、ブラジル・PUCRSのエドゥアルド・エイジリク氏ら国際チームは、南米の小型斑点ネコ「ティグリナ(タイガーキャット)」複合種群を全ゲノムで洗い直し、ボリビア・ユンガスの雲霧林に棲む個体群を新種 Leopardus tilcayo(ティルカヨ)として Current Biology 誌に9月17日発表した。ティグリナは1775年に仏領ギアナで記載されて以来、各地で別名を与えられたり、20世紀にはひとつの種 L. tigrinus にまとめられたりと、分類が二転三転してきた「厄介者」だ。2013年に北方種と南方種(L. guttulus)に分かれ、2017年に東方種(L. emiliae)、2024年に雲霧種(L. pardinoides)が提案されたが、肝心の北方種の遺伝データが乏しかった。今回チームは中南米8か国から集めた38個体の全ゲノムを解析。うち8個体は博物館標本の骨や歯、皮から読んだもので、ギアナ楯状地にあるティグリナの模式産地の個体を初めて遺伝的に評価できた。結論は「ティグリナは5つの独立した種からなる」。既提案の4種を裏づけたうえで、ボリビア・ユンガスの系統が約140万年前に他から分岐した別種だと確定し、さらにペルー・ユンガスの個体群を新亜種 L. tigrinus antisuyo として記載した。新種の記載は、野生で捕獲・撮影された1頭と、ラパスの野生動物保護施設「センダ・ベルデ」で暮らす1頭、たった2頭の生体に基づく。ホロタイプとなった飼育個体の愛称は「ティグリノ」。約10年前に施設へやってきたとき、ノガレス=アスカルンス氏は「ほかのネコとは見た目が違う」と感じていたという。体重1.5〜2kg、頭胴長は最大50cmほどで「イエネコより小さい」。雲霧種より毛が短く模様のコントラストが低く、開いたロゼット斑が大きく不規則で、尾の帯が不完全なことなどで見分けられる。種小名はボリビア・ユンガスで地元の人々がこのネコを呼ぶ名「ティルカヨ」から。「先祖代々の知識と、この動物とのつながりに敬意を表した」と著者らは書いている。食性も分布も個体数もまだ分かっていない。「『北方ティグリナ』のひとくくりで『危急』とされてきた種は、単独で評価すれば『絶滅危惧』に上がるかもしれない」とレスクロアール氏。森林伐採、密猟、イヌから伝染する病気に脅かされる小さなネコに、名前がついたことで保全の目が向くことを、研究者らは願っている。

🔗 https://www.livescience.com/animals/cats/scientists-name-a-new-cat-species-for-the-first-time-in-over-a-century

2.

「上唇」だけが突き出ていた ― 世界屈指のシクリッド天国タンガニーカ湖から、日本の研究者らが新種 Neolamprologus labrosus を記載。DNAは近縁種と混じっても、姿は別物

魚類(シクリッド科)ザンビア・タンガニーカ湖2026

Neolamprologus leleupi, a congeneric cichlid from Lake Tanganyika

📷 Mario Rubio García / Wikimedia Commons(CC BY 2.0) | ※イメージ:同属種 Neolamprologus leleupi 新種は同じ属の岩場性シクリッドで、下唇より明らかに突き出た上唇が最大の特徴。写真は近縁の別種

アフリカ東部のタンガニーカ湖は、爆発的な適応放散によって生まれた、極めて多様なシクリッド(カワスズメ科)の魚たちのすみかだ。数百種が知られ、観賞魚としても世界中で愛されている。それでもなお、湖には名前のない魚が残っていた。高橋鉄美氏(日本)、ヨス・スヌークス氏(ベルギー王立中央アフリカ博物館)、佐藤駿氏(日本)は、ザンビア側のカセンガとコンベで行った最近の調査で見つかった未記載の魚を、新種 Neolamprologus labrosus として Journal of Fish Biology 誌に発表した(9月15日公開)。Neolamprologus 属はタンガニーカ湖固有のシクリッドの中でも最も種数の多いグループのひとつで、岩の隙間や貝殻を巣にする小型種が多い。新種は、上唇が下唇を越えて目立って突き出るという、属内で他に例のない口の形をしている。種小名 labrosus はラテン語で「唇の大きな」の意味だ。このほかにも複数の形態的特徴で近縁種と区別できる。興味深いのは遺伝子の結果だ。ミトコンドリアのND2遺伝子で系統解析をすると、新種の個体は単系統にまとまらず、同じ場所に共存する N. mustax と混ざり合ったひとつのクレードを形成した。つまり母系遺伝するミトコンドリアDNAでは、両者は区別がつかない。それでも、同所的に暮らしているにもかかわらず、形態は明確に異なっている。タンガニーカ湖のシクリッドでは、種分化が急速で、種間交雑や祖先多型の共有によってミトコンドリアの系統が種の境界と一致しないことがよく知られている。新種と N. mustax も、そうした「若い」種のペアなのかもしれない。著者らは、この発見がタンガニーカ湖のシクリッド多様性がいまだ過小評価されていることを示すと同時に、湖の生態系への人為的圧力が増すなか、そこに棲む動物相を記録し続けることの重要性を強調するものだと述べている。

🔗 https://novataxa.blogspot.com/2026/09/neolamprologus.html

🧠 既知種の新たな発見・知見 ― 3選

3.

コウテイペンギンの「町」は引っ越す ― 衛星が見つけた5つの新コロニー、氷棚が崩れれば45km先へ。数千羽が「より安定した氷」を選んで移住していた

鳥類(ペンギン科)南極・ウェッデル海/ベリングスハウゼン海行動生態・繁殖地選択と衛星観測

Emperor penguins with chicks at Snow Hill Island

📷 Jenny Varley / Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0) | ※イメージ:スノーヒル島のコウテイペンギンの親子 論文はウェッデル海〜ベリングスハウゼン海の5コロニーを衛星画像で追跡。写真は別のコロニー

コウテイペンギン Aptenodytes forsteri は、南極大陸を縁取る定着氷(陸や氷棚に固定された海氷)の上で繁殖する、氷に完全に依存した海鳥だ。現在知られるコロニーは66か所、いや、この論文で69か所になった。英国南極調査所(BAS)のピーター・フレットウェル氏、ダラム大学のグラント・マクドナルド氏らは、欧州のセンチネル2衛星(解像度10m)で氷上の糞の茶色い染みを探し、必要に応じて30〜50cm解像度の超高解像度衛星やランドサットの過去画像を組み合わせて、ウェッデル海からベリングスハウゼン海にかけての5つの「新しい場所」でコロニーを見つけた。論文は Communications Biology 誌に9月17日掲載された。内訳は「新発見」が2、「新設」が1、「移転」が2。ラタデー島の新発見コロニーは、過去画像をさかのぼると1996年から存在し、2006年ごろに40km東の深い入り江へ移っていた。ヘリコプターからの数えで雛だけで1,152羽。ケース島のコロニーは2023年に新たにできたもので、周辺では2022年以降、定着氷が早く消えることによる繁殖失敗が相次いでいるため、より安定した氷を求めた移住者たちだと考えられる。移転組はもっと劇的だ。プロフナー岬のコロニーは2023年3月、巣のあった氷舌が氷の裂け目に沿って崩落し、繁殖地を丸ごと失った。その年の10月には30km西の名もない湾にわずか数十羽の再結集が見られ、翌年、翌々年と染みは濃くなっていった。ダーリントン岬のコロニーは2021年から氷棚の上と定着氷の間を行き来したのち、2022年11月、雛が巣立つ前に背後の氷棚が崩れ、2023年には45km南のバトラー島の入り江へ移った。「フェニックス」と仮に名づけられた5つ目のコロニーは、一般市民がコペルニクス衛星ブラウザで見つけてBlueskyに投稿したのが最初の記録。2022年に突然大きくなっており、2016年に崩壊した2万2千羽のハレー湾コロニーの残党が移ってきたのかもしれないと、著者らは推測する。彼らの町は決してでたらめに動いていない。83%の年で前年から5km以内にとどまる一方、環境が変われば20km、時に100km以上離れた場所へ、より安定した氷を「選んで」移る。移転後に元の規模を取り戻すには2〜3年かかるらしい。海氷の減少、氷棚の崩壊、暴風の増加で引っ越しは今後増えるだろう。著者らは「限られた区域の保護区ではコロニーを守れない。種そのものを特別保護し、毎年大陸の全海岸線を衛星で見張る必要がある」と結んでいる。

🔗 https://www.nature.com/articles/s42003-026-10961-y

4.

「オキアミがいる!」と紅茶を投げ出した ― 南極の食物連鎖を支えるナンキョクオキアミが、水深1,100mの熱水噴出孔に。卵を抱えたメスが、微生物を食べ、金属を溜めていた

甲殻類(オキアミ目)南極半島沖・ブランスフィールド海峡生態学・深海の繁殖生息地

Antarctic krill Euphausia superba in the water

📷 Oleksandr Bogomaz / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0) | ※イメージ:ナンキョクオキアミ Euphausia superba 普段は表層で群れをつくり、飛行機からも撮影できる。熱水噴出孔での確認は今回が初めて

ナンキョクオキアミ Euphausia superba は、南極海の「生命線」だ。ペンギン、アザラシ、クジラの多くが直接食べ、そうでない動物もオキアミを食べる何かを食べている。植物プランクトンの栄養を循環させ、養殖飼料やオメガ3サプリのために大量に漁獲もされる。オレゴン州立大学の生物海洋学者キム・バーナード氏は「南極半島は地球上で最も急速に温暖化している地域のひとつで、その影響は食物網を通じてオキアミ個体群にまで及んでいる」と語る。そのオキアミが、思いもよらない場所で見つかった。2024年末、ナショナルジオグラフィックとロレックスの「パーペチュアル・プラネット南極海探検」でシュミット海洋研究所の調査船に乗っていたバーナード氏は、船内食堂で紅茶を飲みながら大画面を眺めていた。同僚のベントス生態学者アンドリュー・サーバー氏が、水深約1,100mの海溝で遠隔操作探査機「スバスチャン」を使い、熱水噴出孔――地殻の奥から金属や硫化物を含む高温の水が噴き出し、塔のような構造をつくる場所――を撮影していたのだ。画面の隅で何かが動いた。間違いなくオキアミだった。「水中バレエのようにバク転してピルエットしていた。紅茶を放り投げて、『オキアミがいる!』と叫びながら管制室へ駆け下りた」。熱水噴出孔でオキアミが見つかったのは初めてだ。地質と微生物の採取を予定していたチームは、貴重な15分をバーナード氏に譲り、吸引サンプラーで4匹を捕獲した。全て繁殖期のメスで、今にも産みそうなほど大量の卵を抱えていた。メスは深い海の上の表層で産卵すると考えられていたが、観察されたことはなかった。論文は Communications Biology 誌に掲載された。胃の内容物を、噴出孔のない浅い海底で採った個体と比べると、4匹は明らかに噴出孔に棲む微生物を食べていた。日光と光合成に依存する季節性の植物プランクトンと違い、微生物なら一年中ある。乾燥させてリュックに入れて持ち帰った組織からは、噴出孔由来のマンガンなどの金属が高濃度で検出された。マンガンは甲殻類の胚発生に重要な栄養素で、南極海では極めて乏しい。噴出孔近くの暖かい水は胚の発生も早めるかもしれない。深海へ潜るのは大きなエネルギーを要し、カドミウムや鉛といった有毒金属にさらされる危険もある。それでも来るからには、見返りがあるはずだ。「繁殖期のオキアミにとって深海環境が果たす役割の解明に、力を注ぐことが極めて重要だ」とバーナード氏。研究に関わっていない英国南極調査所のサイモン・ヒル氏は「噴出孔を利用できることは示したが、依存しているとまでは言えない」としつつ、「新たに見つかった脆弱な生息地を海洋保護区に加えられる仕組みが必要だ」と話す。2か月後、同じ船が1,600km離れた別の南極の熱水噴出孔を訪れた。そこにも、卵を抱えたメスのオキアミがあふれていた。「一度きりの出来事ではない。私たちの想像以上の何かがある」。

🔗 https://www.npr.org/2026/09/15/nx-s1-5968643/antarctic-krill-hydrothermal-vent-south-pole

5.

「不慣れな魚」ほど群れの真ん中にいた ― 慣れた魚と慣れていない魚を混ぜて泳がせたら、環境に慣れていない個体は仲間に寄り添い、追従し、AIにも見分けられた

魚類(カラシン科・ブラックネオンテトラ)スペイン・バルセロナ(実験)集団行動・利己的群れ仮説

Black neon tetra Hyphessobrycon herbertaxelrodi

📷 Brian Gratwicke / Wikimedia Commons(CC BY 2.0) | ※イメージ:ブラックネオンテトラ Hyphessobrycon herbertaxelrodi 南米原産の小型カラシン。密な群れをつくる性質から、集団運動の実験によく使われる

魚の群れや鳥の群れは、一匹一匹が近くの仲間との単純なルールに従うだけで、全体としてまとまった動きを生み出す。では、群れの中で「置かれた状況への慣れ具合」が違う個体が混じっていたら何が起きるのか。バルセロナのカタルーニャ工科大学(UPC)の物理学者アンドレウ・プイ氏、ロムアルド・パストル=サトラス氏らは、英ブリストル大学のクリストス・イオアヌ氏らと共同で、水槽に慣らした(habituated)ブラックネオンテトラ Hyphessobrycon herbertaxelrodi の小集団と、まだ慣れていない小集団を合流させ、その泳ぎを定量的に追跡した。論文は Communications Biology 誌に9月14日掲載された。結果ははっきりしていた。泳ぐ環境に不慣れな魚は、群れの中でより中心寄りの位置を占め、隣の仲間との距離を詰めた。これは「利己的群れ仮説」――捕食の危険を感じる個体ほど、自分が狙われにくい群れの内側へ入ろうとする――と一致する。さらに不慣れな魚は、慣れた魚に比べて仲間との動きの協調性が高く、「ダッシュして滑る」バースト&コースト遊泳の周期が短く、情報の伝達効率が高く、そして自分から進路を決めるより仲間についていく「フォロワー」役を取る傾向が強かった。こうした違いは、近くの個体との局所的な相互作用のルールを調整することで生じているらしい。研究チームは検証のため、個々の魚の軌跡データからどちらのグループ出身かを分類する機械学習ツールを開発し、慣れた魚と不慣れな魚を高精度で見分けることに成功した。つまり、たった数分の泳ぎ方に「不安の痕跡」が刻まれているということだ。この研究は、個体レベルの経験の違い――ここでは実験環境への曝露時間という操作可能な要因――が、局所的な相互作用を通じて群れの中の空間的な「棲み分け」を生み出すことを示している。物理学の集団運動モデルと動物行動学が交わる地点で、群れの秩序がどのように個体の内面から立ち上がるのかを問う一歩だ。

🔗 https://www.nature.com/articles/s42003-026-10861-1

毎朝8時配信

コメントをどうぞ