🌍🐾 世界の動物・昆虫ニュース — 2026.09.06
新種 2件 + 新知見 3件 = 計5件
🔬 新種発見 ― 2選
1.
誰も見ていなかったインド洋の深海に149の新種 ― クリスマス島・ココス諸島の海山、そして1000本の「サメの歯の墓場」
深海生物
インド洋(豪州領)
2026
📷 CSIRO / Museums Victoria | 「グリーンアイ海山」で採集されたアオメエソ属(Chlorophthalmus)の新種
インド洋は地球の海の約5分の1を占め、その9割が水深1000mを超える。それなのに、太平洋や大西洋に比べて深海の生きものはほとんど調べられていなかった。ジャワ島の南西、オーストラリア領のクリスマス島とココス(キーリング)諸島の周辺に連なる海山群を、33人の国際チームが調査船RVインベスティゲーターで初めて系統的に調べた結果が Deep-Sea Research Part II 誌に発表された。水深94〜5431mから見つかった生物は1059種。うち149種が新種で、クロサンゴ類、多毛類、ナマコ(Oneirophanta 属)、深海魚のアオメエソ類(Chlorophthalmus)、寄生性フジツボ(Rhizolepas 属)などが含まれる。海山は深層流をせき止めて「栄養のオアシス」となり、濾過食者を養っていた。忘れがたい発見はココス深海平原で引き揚げられた約1000本のサメの歯 ― ホホジロザメやアオザメ、イタチザメに加え、絶滅したメガロドンまで、2200万年分の進化が一箇所に堆積した「サメの墓場」だった。
2.
1000万年前に袂を分かった「アフガンのトカゲ」― ヒンドゥークシュ山麓の国境をまたぐ新種スキンク
爬虫類
アフガニスタン・パキスタン
2026
📷 Wikimedia Commons | ※イメージ:同属の Heremites septemtaeniatus(西アジア産)。新種は本種を含む西方の系統群から深く分岐している
西パレアルクティック(ヨーロッパ〜西アジア)に分布するスキンク(トカゲ科)の一群 Heremites 属には、長年の「宿題」があった。アフガニスタン東部とパキスタン北西部、ヒンドゥークシュ山脈の南麓に飛び地のように分布する個体群が、どの種に属するのか定まらなかったのだ。パキスタン自然史博物館などの国際チームがミトコンドリアと核の6遺伝子座による系統解析と形態の多変量解析を組み合わせたところ、この東方個体群は約1000万年前(中新世後期)に西方の系統から分かれた独立の系統であることが判明。ミトコンドリアDNAの差は15〜21%に達し、体の計測値や鱗の数でも他種と明確に区別できた。研究チームはこれを新種 Heremites afghanicus として記載。種小名は国名ではなく、ヒンドゥークシュ南麓に暮らす「アフガン人(パシュトゥーン人)」に捧げられている。知られている産地は国境を挟んで2箇所のみ。ZooKeys 誌。
🧠 既知種の新たな発見・知見 ― 3選
3.
「ユニコーンの角」はなぜ真っすぐなのか ― イッカクの牙は右巻きと左巻きの綱引きで伸びていた
哺乳類
デンマーク・オーフス大学
2026
📷 via Phys.org | 上唇を突き破って伸びるイッカクの牙。長さは最大3mに達する
中世ヨーロッパで「ユニコーンの角」として売られたイッカク(Monodon monoceros)の牙は、オスの左の犬歯が上唇を貫いて最大3mまで伸びたものだ。動物界で唯一の「一本牙」であり、ゾウやイノシシの牙のように曲がらず、螺旋の溝を刻みながら矢のように真っすぐ伸びる。なぜ曲がらないのかは長年の謎だった。生物学者・化学者・物理学者からなる国際チームは、欧州の3つのシンクロトロン放射光施設で牙を3D X線解析し、その答えを Nature Communications 誌に報告した。牙は内側の象牙質と外側のセメント質の2層でできており、象牙質の結晶構造は右巻き、セメント質は左巻きの螺旋を描く。反対向きに捻れる2つの力が互いに打ち消し合い、結果として牙は曲がらずに直進する ― 木材にねじ込むネジが、頭から外へ向かって進んでいくようなものだ、と主任著者のヘンリク・ビルケダル氏は説明する。牙の内部には木の年輪のような成長層もあり、最長80年に及ぶ個体の生涯を読み取る手がかりになる。標本には博物館所蔵品のほか、グリーンランドのイヌイットが食用に捕獲した個体の牙が使われた。
🔗 https://phys.org/news/2026-08-scientists-narwhals-nature-straight-tusk.html
4.
哺乳類で唯一、抗体の「設計図」を2セット持っていた ― 500種超のコウモリがウイルスと共存できる理由の一端
哺乳類
米国・テュレーン大学
2026
📷 Wikimedia Commons | オオクビワコウモリ Eptesicus fuscus(北米)。ヒナコウモリ科の代表的な1種で、研究では33個と99個からなる2組の抗体遺伝子群が確認された
コウモリは重篤な病気を引き起こしうるウイルスを体内に宿しながら、自身はほとんど発症しない。この長年の謎に、テュレーン大学とスタンフォード大学、米CDCの共同チームが新たな手がかりを見つけた。Science Advances 誌に発表された研究によれば、コウモリ最大の科であるヒナコウモリ科(500種以上、南極以外の全大陸に分布)は、抗体の重鎖をつくる遺伝子群を、別々の染色体上に2セット持っている。ヒトを含む既知の哺乳類はすべて1セットしか持たない。オオクビワコウモリでは、一方のセットが33個、もう一方が99個の遺伝子からなり、しかも2つの役割は同じではなかった。一方は抗体を繰り返し変異させて標的にぴたりと合うよう磨き込み、もう一方は別の方針で多様性を確保する。「哺乳類でこんなものは見たことがない」と主著者のハンナ・フランク氏。コウモリ免疫の研究は自然免疫に偏りがちだったが、抗体を担う獲得免疫にも未知の設計があることを示した成果だ。ウイルスの「貯水池」となるしくみの全容解明にはまだ遠いが、スピルオーバー対策の新しい出発点になる。
🔗 https://www.sciencedaily.com/releases/2026/09/260901010713.htm
5.
仲間を助けるアリと、見て通り過ぎるアリ ― 違いは筋力ではなく「脳の遺伝子活動」だった
昆虫
ドイツ・イスラエル
2026
📷 Susanne Foitzik | 拘束された巣仲間を解放しようとするサバクアリ Cataglyphis niger の働きアリ
砂に埋まった仲間を掘り出し、引っ張って助け出す ― 中東の砂漠に暮らすサバクアリの一種 Cataglyphis niger には、こうした救助行動が知られている。ところが同じコロニーの働きアリでも、助ける個体と助けない個体がいる。何が違うのか。マインツ大学とテルアビブ大学のチームは、砂を敷いた試験室で働きアリ1匹を拘束し、放した巣仲間が15分以内に引っ張ったり周囲を掘ったりするかを記録して「救助者」と「非救助者」に分けた。次に両者の触角と脳の各領域(視葉、そして学習と行動制御の中枢であるキノコ体など)からRNAを抽出し、遺伝子の活動を比較した。差がはっきり現れたのはキノコ体で、救助者では嗅覚受容、ホルモン調節、代謝、免疫に関わる15個の遺伝子がより活発だった。一方、体の大きさや形態、エネルギー貯蔵量に差はなく、「力の強いアリが助ける」わけではなかった。助けるかどうかは神経系の状態の違いに根ざしている ― Journal of Experimental Biology 誌に発表された結果は、社会性昆虫の「思いやり」の個体差を分子レベルで説明する第一歩となる。
🔗 https://phys.org/news/2026-09-ant-nervous-gene-behavior.html
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